マガジン38号こぼれ話(子ども夢パーク・西野さんのインタビュー)

 38 号では、⼦どもの権利について知識を深める施設として、川崎市⼦ども夢パークを取材し、所⻑の⻄野博之さんにお話を伺いました。マガジンに⼊りきらなかった話を掲載します。

ーここはどういう場所なのでしょうか?
 ここは「やめなさい」「危ないからダメ」などの禁⽌の⾔葉を使わないようにする場所。⼦どもがやってみたいことに挑戦できる場所です。今の時代、「⼦どものため」と⾔いながらも⼤⼈が決めた通りのプログラムが多くなりすぎています。⼦どもが育つ時には⼤⼈からどう⾒られているかを気にせずにすむ環境が必要です。
 最近の⼦どもは⾃分が何もしないうちに「⾃分にはできっこない」「やっていいのか、わからない」「教わっていないから、できない」と思い込むようになっている気がします。⾒よう⾒まねで覚えていく体験。例えば、ただ⽊を切るだけの体験でも夢中になってやってみる時間が⼤切です。

ー緊急事態宣⾔下ではどうされていましたか?
 夢パークは新型コロナが感染拡大した休校要請機関も緊急事態宣言下でも開け続けました。まずもって虐待防⽌の視点がありました。⼦どもと⼀緒に家に閉じこもっていると、イライラもします。⼦どもがゲームばかりするのに怒りたくなるだろうし、リモートワークで親が家で仕事するとなると、⼦どもに怒りが向くのは想像しやすかったのです。緊急事態であっても、いつもと変わらない場所というのが⼦どもにとっては必要です。親にとっても救いの場所になると考えました。⼦どもは⾔葉で助けてと⾔えないことが多いです。周りが、⼦どもの変化を⾒つけてあげなくてはならないと思います。家に居場所がない⼦どもたちもいます。障がいなどの特性で⼦どもと家や地域にいることが難しいという⼤⼈たちも⼦どもを連れて来てくれていました。

ー条例ができた頃から 20 年経ちましたが、その頃と⽐べて変化を感じますか?
 川崎市の⼦どもの権利に関する条例は 2000年12⽉に議会で可決され、2001年4⽉に施⾏されました。条例ができた頃は、⾼校⽣による凶悪事件が連続して起きて、「⾼校⽣が何を考えているのかわからない」ということがささやかれるような社会状況でした。今は⾼校⽣よりも⼩さい小学生がストレスを溜めているように感じます。夢パークは当初、中⾼⽣が利⽤するイメージで作ったのですが、今は⼩学⽣や乳幼児親⼦の利⽤が多いです。1年間に約9万⼈が利⽤しています。

ー最近感じることは?
 ⼦育てをしているお⺟さんが⼦育ての正しさを探し求めています。失敗しちゃいけない、正しくないといけないと思っているようです。そのせいか早期教育が広がっているようです。⽔や泥で遊んでばかりいる子をほっておけない親が増えています。 親⾃⾝にも⾃信がないし、⼦どもの数も減っていることもあって、育児に⼀⽣懸命になっているようです。先回りして悩む⼈も多いのです。まだ起きてもいないことを⼼配するのはやめましょう。問題は起きてから、具体的に悩む。親が⼦どもを⾒て「なんとかなる」「⼤丈夫」と思えることが⼤事です。

ー川崎市⼦どもの権利条例 20 年について思うことは?子どもの権利
 夢パークのオープンは 2003年。ここは元⼯場跡地です。そこに⼟を⼊れて⽊を植えてつくってきました。20年近く経って、だいぶ木も大きくなりました。⾏政の施設では珍しく、遊具はすべて⼿作りです。
 来年は川崎に⼦どもの権利に関する条例が施行されて20周年の節⽬の年なのでさまざまな発信が⾏われる予定です。20年を契機に改めて⾒直していく必要も感じています。

ーメッセージをお願いします
 正しい親を頑張るのをやめましょう。親がずっこけているくらいの⽅がいいのです。⼦どもは、⽣きてるだけですごいことなのです。「こんな⼦になってほしい」と思うばかりに、わずか数年しか⽣きていない⼦どもの「できてない」ことばかりを探してしまうのはやめましょう。ダメ出しをしない。⼦どもがやっていることを⾯⽩がろう。⼦どもが挑戦したくなるように⼤⼈は「ぐっと我慢」です。 命はそのままで輝いています。⽣きているだけでありがとうという気持ちを持ちましょう。「⽣まれてくれてありがとう、あなたがいてくれて幸せだよ」というシンプルなメッセージを伝えられたらいいですね。無条件に愛を伝えるのは、難しく感じることもあるかもしれないけど、伝えあっていきましょう。身近にいる大人たちのそういう眼差しを⼦どもが感じたら、⼦どもは意欲を持って動き出します。

<取材者より>
川崎に⼦どもの権利条例ができて 20年。20年というと⼦どもだった⼈が親の⽴場になるほどの期間です。条例ができた当時と⽐べて⼦どもを取り巻く状況も変化し、当事者も⼀新しています。条例制定に熱を持って活動に取り組んだ⼈たちから、今の⼦育て世代が、「⼦どもの権利」に関する意識を受け継ぐ責任と必要があるということを⻄野さんのお話を聞いて感じました。⼦ども夢パークは「⼦どもの権利」に関することを体感できる施設。⼦ども夢パークを訪ねてみましょう!

<⻄野さんの本があります>
⻄野流「ゆる親」のすすめ<上> 7 歳までのお守り BOOK
2015年2⽉25⽇刊⾏ ⻄野 博之 著
西野流「ゆる親」のすすめ<上>7歳までのお守りBOOK | japama
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